マウスへの尾静脈注射のコツ

マウスへの尾静脈注射は、初めてやるときは絶望するほど難しく感じるだろう。

近くに教えてくれる人がいるとは限らない。

私も周りに教えてくれる人がいなかったので、ネットで検索したり、何十回と試行錯誤したりすることで、方法を習得した。そのコツを紹介したい。

なお、私が紹介する方法は、おそらく一番必要なものが少ない。また無麻酔で行う。その分、難しいかもしれないが、慣れればできる。私はこの方法で大体2,3分に1匹のペースで静脈注射することが可能である。


用意するもの

・インスリン注射用シリンジ(私は31Gを使用)

・マウス保定器(なければ50mlの遠沈管で自作)

・アルコール綿花(なければアルコールとキムワイプ)


保定器具の作り方

・50mlチューブのキャップに5-7mm程度の穴をあける(マウスの尻尾をそこから外に出す)

・チューブの数か所に1mm程度の空気穴をあける(呼吸させるため)

なお、これら穴をあける道具は各々が好きに選べばいいが、私は注射針をガスバーナーで熱して、それを用いて穴をあけた。


静脈注射方法

・マウスを保定器に入れる。

・マウスの尻尾の根本を人差し指と親指で押さえる。使用するのは両側面に走っている静脈なので、その根本

・根元を抑えているのと同じ手の中指と薬指で尻尾の遠位をはさんで、少し尻尾を引っ張ることでテンションをかける。

・親指、人差し指で挟んだ所から、薬指、中指で挟んだ間の尻尾を、デコピンの容量でべしべし叩く

・すると明らかに血管が怒張してくる。この血管の怒張を起こさせるのが最も重要である。目で見て変化がないようなら、駆血がうまくいっていないことを意味する。このステップができなければ、次のステップに進むのはやめて、できるようになるまで練習を繰り返したほうがよい。(最悪、怒張しなくても注射可能だが、難易度は跳ね上がるためおすすめしない)

・怒張している血管に対して、できる限り平行になるよう注射針の角度を傾ける。この時、シリンジを、尻尾を挟んでいる薬指に接触させると、シリンジが安定し、針先がぶれなくなる。

・手の力をできる限り抜いて、ゆっくりと針を進める。血管の中に注射針が入ると、手に伝わる感覚が変わる(抵抗が少なくなる)。この感覚をつかめるようになると、ほぼ100%の確率で静脈注射が可能となる。力んでいると、この微妙な感覚の変化を感じ取ることができない。

・血管に入ってから、さらに1-2mm注射針をすすめる。そうすることで、薬剤を注入中に多少針先が動いても、血管から外れなくなる。針先を進めているときに、再び抵抗が出てきたら、血管外に針先が出てしまっている証拠である。

・血管にちゃんと針が入っていれば、薬剤を注入するときに抵抗がほどんどない。また薬剤が透明であれば、血管の色が透明になるので、簡単にわかる。


最後に

簡単に説明した。なお、私は面倒くさがりなので、保定器も使っていない。ケージの金網の上にマウスをのせて、尻尾だけおさえた状態で注射している。おそらく、そんな大雑把なやり方を書いてある書籍も、そんな大雑把なやり方を教えている人もいないとは思う。しかし、少なくとも私はそれで問題なく注射できるようになっている(半年もかからず、これくらいできるようになった。マウスも20匹程度しか使っていない)。なお、これは私が誰も教えてくれない状況で、試行錯誤した結果、これだけの期間がかかっただけであり、この記事を読んでくださった皆さんが、より早く、静脈注射の技術を習得することを心より願う。




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